認知症をくい止めろ~世界の最前線:認知症800万人時代
  • 9 年前
【認知症をくい止めろ~世界の最前線 認知症800万人時代 2014年】
■ 認知症とは
■ すでにある薬でアルツハイマー病に挑む
■ 注目の介護法 “ユマニチュード”
■ ケアのポイント
■ “触る”ことで穏やかに
■ 認知症の予防法「心臓に良いことは脳に良い!」

認知症の進行をくい止める方法が見えてきた! 世界の認知症対策の最前線では、全く新しいアプローチに注目が集まっている。認知症とは何の関係もない既存薬を投与したところ、記憶力の低下がくい止められた。はいかい・暴言などの症状が進行しても、ある介護法で症状を改善できることにも注目が集まっている。日米欧のホットな対策の現場を緊急報告。日本の医療・介護の現場が、今できることは何か徹底議論する。

【認知症とは】

認知症の7割を占めるのがアルツハイマー病です。アルツハイマー病では発症の前から脳の「海馬」が萎縮し、記憶力の低下が始まります。萎縮が進んでいくと記憶力の低下だけでなく、全身の機能低下も起こります。

【すでにある薬でアルツハイマー病に挑む】

アルツハイマー病がどのように進み、何が起こっているのか?その姿が徐々に明らかになってきました。いま新薬開発が進んでいる一方で、既にある薬の効果を活かす取り組みが世界で始まっています。日本の研究で明らかになったのが脳梗塞の再発防止薬「シロスタゾール」です。シロスタゾールは原因物質「アミロイドβ」の排出を促す力があることがわかっています。
アメリカで開発がすすむのが「鼻からインスリンを噴霧する方法」です。
アルツハイマー病では脳でエネルギー源の糖を使うのが難しくなっていることが明らかになっているからです。新薬開発で壁となる「副作用」の懸念が少ないため、早い実用化が期待できます。
現在、シロスタゾール、インスリンは認知症の治療薬としては認められていません。

【注目の介護法 “ユマニチュード”】

知覚・感情・言語をつかった包括的なコミュニケーションで、「人間らしさを取りもどす」ためのケアの手法です。考案したのは、運動学の教師だったフランス人のイヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさん。
日本に来て、医療や介護の現場を中心的に回っているのは、ジネストさんです。
認知症の人に対して、徹底して人間らしく接することで行動・心理症状を和らげることができる、といわれています。
ケアのポイント

ユマニチュードのポイントは「見つめる」「話しかける」「触れる」そして、「寝たきりにしない」の4つです。
・見つめる
正面から笑顔で見つめます。
認知症の人は、視界の中心にいる人しか認識できない場合があるためです。
認知の機能が非常に落ちている人では、不自然だと感じるくらい近づき、視線をつかみにいきます。「自分はあなたの敵ではない」というメッセージを伝えるため、基本は笑顔で近づきましょう。
相手を「見ない」でケアをすると、「あなたはそこに存在していないものだと思っている」というメッセージを送ってしまうことになります。
・触れる
触れる時は、やさしく。つかむのではなく、動こうとする意志を生かして、下から支えます。
・話しかける
優しい声で、できるだけ前向きな言葉で話をします。お世話をする時には、実況中継をするように話しかけ続けます。認知症の人は何をしている最中なのか、忘れてしまうことがあるためです。
・寝たきりにしない
無理に立たせることは危険です。

【“触る”ことで穏やかに】

認知症が進行し、介護が必要になってきた段階で、暴力とか徘徊とかケアの拒否などの「行動・心理症状」がおこることがあります。この行動・心理症状はストレスを感じたときに分泌される「ストレスホルモン」が関係していることがわかってきました。
ストレスホルモンは、ストレスから体を守るために分泌されますが、認知症が進行すると分泌を抑える機能が低下します。そのためストレスホルモンが過剰な状態になり、興奮状態が続いてしまう場合があります。それが行動・心理症状につながると見られています。
この「ストレスホルモン」を減らす方法として注目されているのが「触る」ケアです。やさしく、ゆっくりさわることで、ストレスホルモン、行動・心理症状の起こる回数が減ることがわかってきました。

【認知症の予防法「心臓に良いことは脳に良い!」】

これは認知症の危険度を「上げる」ものと「下げる」ものです。実は、心臓病や脳卒中と同じです。
生活習慣病の予防を徹底することは、認知症の予防につながります。イギリスでは、認知症になる確率が20年前に比べて低下しています。これは心臓病や脳卒中の対策を進めたことが良い影響を与えているのです!
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