福岡県朝倉市だけに自生する淡水ノリ・スイゼンジノリが絶滅の危機に瀕しています。
生産量が激減したことで、老舗のノリ業者が経営難に陥り、行政や地元も保護に乗り出しました。
●遠藤金川堂・遠藤淳代表
「こういった板状の海苔に加工して、秋月藩に献上して、それが江戸幕府に行っていたそうです」
朝倉市のノリ業者遠藤金川堂は、江戸時代の寛政5年=1793年創業の老舗です。
代表の遠藤淳さんは17代目にあたります。
遠藤金川堂は、黄金川でラン藻の一種であるスイゼンジノリ=別名・川茸を採取してきました。
スイゼンジノリは、温度が一定で、ミネラルが豊富な水にしか生息しません。
現在は湧き水を源流とする黄金川にしか自生しておらず、絶滅危惧種に指定されています。
●今林記者
「こちらの黄金川、かつて水が流れていたところが草で覆われていて、水量が激減したことが分かります。このわずかな水も、ポンプでくみ上げた地下水に頼っているのが現状だということです」
黄金川はこの30年水量が減り続け、ノリ業者はポンプで地下水をくみ上げてしのいできました。
●遠藤代表
「生産量が10年くらい前から激減して、今は10分の1くらいになってしまったものですから、採算が合わないというのと、それに合わせて固定費はあまり変わらなくて」
遠藤金川堂は、先月、9人いた従業員を全員解雇しました。
さらに月十数万円というポンプの電気代を負担できなくなり、地下水のくみ上げも先月いっぱいでやめることにしました。
●遠藤代表
「非常に残念ですね。悔しいですけど、会社の体力が尽きてしまった今ですね、私どもだけではそうしようもないところにきてしまった」
黄金川の環境悪化は地元住民にとっても切実な問題です。
近くに住む田子森さんも黄金川の変化を間近で見てきた一人です。
●黄金川の近くに住む田子森英樹さん
「溝という溝、ほとんどが両脇から湧水が出ていたし、黄金川自体も両脇から湧水が出ていた。今は全くありません。」
田子森さんら地元の住民は、川の再生をめざそうと先週『黄金川を守る会』を発足させました。
●黄金川を守る会・井本五男会長
「私たちの世代でこの川を枯渇させる、荒廃させるということは大変不名誉なことでもあるわけですので、是が非でもこの地域が一つになって守っていきたい」
『守る会』は朝倉市に黄金川の環境整備について協力を申し入れました。
朝倉市はとりあえず今月と来月2か月分の電気代を負担して、地下水のくみ上げを続けることにしました。
●朝倉師・森田俊介市長
「一番大事なことは、スイゼンジノリが自生している黄金川を保全する、そしてその環境をきちっと守っていくということについては、いろんな方法を考えながら今後やっていくということです」
朝倉市は来年以降についても議会と検討することにしていて黄金川はこれまでの水量が当面維持されることになりました。
●遠藤代表
「眠れぬ日々が続いていましたけど、流れが止まらず本当に良かったです。たくさんの生き物もいますので、その生き物の命、またスイゼンジノリも守れたことがとてもうれしいです」
黄金川ではスイゼンジノリを採取している業者がもう1社あります。
一方だけが支援を受けることになりますが、もう一方のノリ業者も今回の決定を歓迎しています。
●喜泉堂・羽野俊彦社長
「これの対策を初めて現市長が公言しましたから。黄金川に市が前向きに取り組んでくれたと言うだけで、私は嬉しいんですよね」
スイゼンジノリは高い保水能力を持ち、近年、工業や医学分野でも注目を集めています。
しかし川の水量の確保と水質の改善という抜本的な対策に取り組まない限りスイゼンジノリの危機は続きます。
■スタジオ
川の水量が減った原因として上流のダムや農地の整備などさまざまな可能性が指摘されています。
今回、ポンプでの地下水のくみ上げ継続が決まりましたが、今後、川の環境を改善するためには抜本的な対策が必要となります。
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