この子に“心の薬”は必要か ルイス・セロー

  • 6 年前
アメリカでは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、アスペルガー症候群、OCD(強迫性障害)などと診断された子どもに対し、親が長期にわたって精神治療薬を飲ませるケースが増えている。子どもは、おとなしくなるが、はたして治療に役立っているのか? それとも、子どものストレスを減らす努力や社会的なしつけなど、親の責務を果たさずに、安易な道を選んでいるにすぎないのか? 

アメリカでは、精神疾患と診断され薬を服用している子どもの数が600万人に及ぶ。ピッツバーグにある小児対象の精神病治療センターに通う10歳の少年ヒューは感情の起伏が激しく、「周囲を混乱させることを面白がり、自殺をほのめかした事もある」と親は言う。自宅への滞在を許されたリポーターは、母親が家族のために用意する薬の数を見て驚く。ペットの犬までが抗うつ剤を飲まされる毎日だ。
何かで負けると感情を制御できなくなる6歳の少年ジャックは、学校から受け入れを拒否され病院内の治療クラスに通っている。発作が起きると看護師が薬を飲ませようとするが、リポーターが説得すると、それだけでおとなしく言うことを聞く。ADHDの薬を毎日飲んでいる15歳の少女ケイリーは、「薬を飲まない時の方が意欲が湧く」と告白する。
「親を困らせる子どもの振る舞いが、性格によるものだったり、単に悪びれているだけで、薬が必要ない場合もあるのでは?」と問うと、「薬が成果を上げているのだからリスクを冒してまで止める必要はない」と答える母親もいる。医師たちも、「副作用が認められず、家族がそう望む以上、自分の判断には間違いない」と胸を張る。