特定秘密保護法案 福島で地方公聴会

  • 10 年前
特定秘密保護法案 福島で地方公聴会
11月25日 16時14分

特定秘密保護法案などを審議している衆議院の特別委員会は、福島市で地方公聴会を開き、公述人からは、原発事故の教訓も踏まえ慎重な審議を求める声や法案に反対する意見が出されました。

この中で福島県浪江町の馬場有町長は「国の存立に重要な法案だが、範囲が非常に広く明確でない。浪江町民は、政府が避難経路の道筋を明らかにしていれば、低線量の被ばくは避けることができた。秘密でなく情報公開がいちばん大切だ。特定秘密保護法案についてはもう少し慎重に対応し、国民のために論議を尽くすことが大切だ」と述べました。
福島県弁護士会の槇裕康副会長は「重要な情報を秘匿する方向でなく、公表・公開を積極的に進める法制度こそ重要だ。いったん白紙に戻し、情報の統制によって福島県民が被った惨禍を十分考慮し、秘密保全法制の在り方を根本的に見直すべきだ」と述べました。
福島市にある桜の聖母短期大学の二瓶由美子教授は「特定秘密保護法案は時の流れに逆行するものだ。法律を作っても、秘密の漏えいや内部告発が起こるのは、人類の歴史が証明している。法案の成立にストップをかけ、もう一度、国民的な議論をしてほしい」と述べました。
福島県いわき市で原子力発電所の計器の保守・管理などを行う会社の名嘉幸照会長は「原発労働者は、外部や家族に原発のことを話せない環境が長年続いてきた。それが原子力の安全神話を生み、取り返しのつかない事故につながった。原発の安全に向けて非常に大事なのは、告発者がいることだ」と述べました。
いわき短期大学の畠中信義特任教授は「情報は公開することで初めて判断することができる。また、人権が失われれば、2度とその人権を戻すことができない。秘密・秘密・秘密と秘匿していくことによって、どうして公益が図られるのか、それがいちばんの問題だ」と述べました。
弁護士の荒木貢氏は「すでに自衛隊法に防衛秘密の規定が存在し、国家公務員法などで守秘義務を課しており、それで十分だ。特定秘密保護法案は、平和主義、民主主義を大きく侵害し、多大な人権抑圧を招く。断固、反対だ」と述べました。
いわき市の佐藤和良市議会議員は「特定秘密保護法案については、慎重な取り扱いか、反対、廃案を求める国民の声が圧倒的だ。今回の公聴会をあすの採決のための通過儀礼にするのではなく、全国で公聴会を開催して国民の声を聞いてほしい」と述べました。
住民「必要な情報を得られなくなることが心配」
公聴会で意見を述べた7人はいずれも各党から推薦された人で、会場で傍聴できる50人も各党に事前に割り振られていたため、一般の住民は入場することができませんでした。
会場周辺には、公聴会に入ることができなかった市民団体のメンバーや住民などおよそ100人が集まり、法案に対する抗議活動を行いました。
参加者たちは、「特定秘密保護法案に反対」とか、「情報は民のもの」などと書かれた横断幕を掲げたりチラシを配ったりして、法案の廃案を訴えました。
抗議活動に参加した福島市の49歳の女性は「限られた人たちを集めて行う今回の公聴会は、公聴会をやったというアリバイづくりとしか考えられません。原発の情報は、今でさえあとから判明する事実があるのに、この法案が成立したら私たちが必要な情報を得られなくなるのではないかと心配です」と話していました。
また、福島市の72歳の女性は「復興関連の法案についてはゆっくりと時間をかけて進めているのに、この法案だけ議論を尽くさずに急いで決めるのはおかしい」と話していました。