最低賃金 14円引き上げへ
  • 11 年前
最低賃金 14円引き上げへ

今年度の最低賃金について厚生労働省の審議会は、全国平均で14円引き上げ、時給763円とする目安を示しました。
10円を超える引き上げは3年ぶりです。

最低賃金は企業が従業員に支払わなければならない最低限の賃金で、毎年、厚生労働省の審議会が示す目安を基に都道府県ごとに決められ、現在の全国平均は時給749円となっています。
審議会は、今年度の最低賃金について5日夜から6日朝にかけて労使双方の代表者で話し合った結果、全国平均の引き上げ額を14円とする目安をまとめました。
これは昨年度の目安の7円より7円高く、10円を超える引き上げは平成22年度以来3年ぶりです。
目安では都道府県をAからDの4つのランクに分けて引き上げ額を示していて、▽東京や大阪など大都市部のAランクで19円、▽埼玉や京都などのBランクで12円、▽CとDランクはいずれも10円としています。
この目安どおりに引き上げられた場合、最低賃金で働いた1か月の収入が生活保護の受給額を下回る11の都道府県のうち、青森、宮城、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、広島の10の都府県は生活保護との逆転現象が解消することになります。
また、北海道では生活保護との差額が大きいため原則2年以内に解消すべきだとして、11円から22円を引き上げの目安として示しました。
今後は、示された目安を基に、ことしの秋をめどに都道府県ごとの最低賃金が決められることになっています。

最低賃金引き上げは成長戦略にも

最低賃金を巡っては、ことし6月に閣議決定された経済の成長戦略「日本再興戦略」の中で、「すべての所得層の賃金の上昇と企業の収益の向上のために、最低賃金の引き上げに努める」とされています。
田村厚生労働大臣は先月、今年度の最低賃金についての審議会が始まった際、「成長戦略を踏まえて審議してほしい」と述べて引き上げを要請し、景気が持ち直しているとされるなか、どこまで引き上げられるかが焦点となっていました。

労働組合「逆転現象解消は評価」

今回示された目安について、労働組合側の委員で連合総合労働局の須田孝総合局長は、「生活保護との逆転現象がほとんどの地域で解消される見通しとなったことや、正社員と非正規雇用の人の格差を少し縮めることができた点は評価している。しかし、目安どおりに最低賃金が引き上げられれば、最も高い東京と最も低い島根と高知の差はますます広がることになり、不満に思っている」と話しています。

経営者側はコメントせず

今回の目安について、経営者側の委員はコメントしていません。
審議会によりますと、話し合いの中で経営者側は「経済の実態にそぐわない大幅な引き上げは中小企業の存続を脅かし、雇用や地域経済にも悪影響を及ぼす。中小企業への支援策が拡充されないままで大幅な引き上げは困難だ」と主張したということです。

専門家「活性化策なければ全体賃上げにつながらない」

雇用問題に詳しい日本総研調査部の山田久部長は、「賃金と物価の両方を上げてデフレを脱却したいという政府の意向や、景気が回復基調にあることが影響して、比較的高い水準の引き上げ額が示されたと思う」と分析しています。
そのうえで、「最低賃金の引き上げはデフレ脱却に向けた第一歩ではあるが、それだけでは不十分で、景気の回復を実感できていない中小企業への支援や経済が停滞する地方の活性化策を同時に打ち出していかなければ、全体の賃上げにはつながっていかない」と指摘しています。